大人のADHD:生活音や物音が大きい、ため息や独り言が多い

ADHDである私の部下について(部下自身がADHDであることを自ら申告しています)、彼が毎朝、出社してくると、それまで静かだった社内には、とにかくいろいろな音がし始めます。

まず彼は出社時、会社のドアを勢いよく開けて入ってきます。そっと開けるということは全くしないので、ドアノブをガチャガチャと力いっぱいに回す音、ドアを開ける勢いによる風圧の凄さ、そしてドアがバタンと閉まる音・・・。ドア1つをとっても、とにかく他の人とは全く違った音が出て、彼が出社したことをドアの物音だけですぐに知ることができます。

そして、彼が自分のデスクに座ったと思いきや、まずは「はぁ~」と1回、必ず大きなため息をつきます。そしてここから終日、彼が帰社するまで、彼のため息の連続が始まります。彼自身のストレスの度合いによってため息の回数に変化はありますが、多い時には1分~数分毎に、通常時でも10分~数10分間に1回のため息を一日中繰り返します。

このため息、“彼の癖” と言ってしまえば簡単ですが、彼曰く、ADHDの特性として「疲れやすい」「マイナス思考」といったことがため息の根本原因としてあるようです。

また、ため息と同じぐらい、彼の口から発せられるのが「独り言」です。とにかく独り言が多いのです。

彼が出社直後に言う独り言で一番多いのが、

「あー 疲れた・・・」

です。出社早々、ため息と同時に発せられるので、周囲の社員のテンションやモチベーションまで下げてしまいます。

あと多い独り言としては、

「だめだー」
「あー」
「休まなきゃ」
「うぅーん・・・」
「難しい」
「大変だぁ~」

・・・といった、基本的にはマイナス思考的なワードが多いです。たまに「よし!」「できた!」といったプラスのワードもありますが、割合としては少ないです。

あと多い独り言としては、口に出して仕事上の文章や書類を読んだり、自分の書いたメールや文章を声に出して復唱したり推敲したりします。これらの独り言は、ストレスが起因している訳ではなく、彼自身が自分自身の仕事に集中するあまり、周囲に人がいることは一切考慮せず、自分の仕事の効率化の為に声に出してしまう・・・というものかと思います。つまり「周囲が見えていない」「自分が思うままに行動してしまう」といったことに起因する独り言のようです。

こうした「ため息」や「独り言」が彼の在席中、ずっと続くわけですが、彼自身は一切、無意識の中で行っています。そして、指摘や注意しない限り、毎日、何ヶ月と続きます。彼自身がよく、友人や親友から「自分を中心に回っているよね」と言われるそうなのですが、まさに!といった感じです。

そして、ため息や独り言の他には、生活音というのでしょうか。彼のデスクワーク中には、ペンが机に落ちる音、携帯電話がデスクに落ちる音、パソコンのマウスを手で飛ばしてしまい床に転がる音、書類や本を乱雑に扱う音、スーツをハンガーに掛ける際にハンガーを床に落とす音・・・ と、とにかくいろいろな音が頻繁にするのです。「ガタン」「ドサッ」「ゴン」「カーン(金属音)」などなど・・・。

これら生活音が多いのは、ADHDの「不注意」が原因と考えられ、とにかく近くで見ていても動作が「せっかち」で「焦り気味」といった印象を受けますし、本人もせっかちだと自覚しています。よく彼自身の親からも「せっかち」だの「物音がうるさい」と言われる、怒鳴られるとのことでした。

そしてさらには、こうした生活音の上に、追い打ちを掛ける音が発生します。それは、

「机をコツコツと指で叩く音」
「シャープペンを何度も何度もカチカチと鳴らす音」

です。これらが幾度となく、1日に何度も頻繁に発生します。

これらは明らかにADHDの「多動性」の症状なのですが、とにかく落ち着きがなく、指先も常に動いています。貧乏ゆすりのような症状はあまりないのですが、指先を常に動かす癖がとても目立っています。

このように、彼は一日中、常に何らかの音をずっと発し続けています。よって、彼が視界に入らない状態でも、常に音は鳴り続けているので、彼の存在の有無が一発で分かるのです。

しかし、こうした音が一日に何度か、突然途切れ、一切音がなくなる時があるのです。それはつまり、彼が「居眠りをしている時」です。

居眠りについては、また別の機会にお話しようと思いますが、とにかく彼は仕事中、何度も居眠りをします。これはおそらく、ADHDだけでなく、その二次障害の影響も多分にあると思うのですが、彼の場合には、

「ADHD特有の疲れやすさ」
「夜間の不眠の影響」
「うつ病の薬の副作用」

などが仕事中の居眠りの原因のように思われます。(一日中眠いようで、常に「あくび」をしています。声を出した「大きなあくび」をするので、周囲もちょっと困っているのですが・・・)

今回は、ADHDの彼からは、「とにかくいろいろな音(大きな動作音や生活音、ため息、独り言など)が聞こえてくる」といったお話でした。