私の部下はADHDです。

私が勝手に彼をADHDであると判断した訳ではなく、彼(部下)自らがADHDであることを告白してきました。

その部下とは、知り合って10数年、私の部下となってからは5年以上が経過していますが、彼がADHDであることを知るずっと以前から、「明らかに普通の人とは違うな・・・」ということを、会って数回で感じ取り、確信にまで至りました。

当時、彼は私の勤めていた会社にお客様として来社してきました。

初めて会ったその瞬間は、たいへん常識的で、とてもしっかりとした印象だったのですが、会って10分としないうちに、落ち着きのなさが顕著に出てきました。とにかくじっとしていない、落ち着かない印象なのです。

体がよく動くというか、もじもじしているというか、手先で体を掻いたり触ったり、手先を机にコツコツとしたり、手先を無意味に動かしたり、ペンで意味不明の線をノートに描いたり・・・

そして手先だけではなく、彼の座る隣の椅子を手で撫で回したり動かしたり、さらには会議が一息ついた時、突然席を立ち始めて室内を徘徊したり、トイレに立ったりと・・・

よって毎回、彼が去った後の会議室は、乱れて汚れるのです。

彼の座っていた椅子がナナメになっていることはもちろん、本来は使われないはずの隣の椅子はズレており、ガラスのテーブルは彼の座った所だけが指紋や手垢だらけ、かつ、謎のホコリやゴミが散らばり・・・

そして彼は、室内を徘徊する時や出入りの際、よく壁や棚に自身の体をぶつけるのです。棚に当たるので置き物はズレてしまい、白い壁には靴が当たった跡が残ったり・・・

さらに彼は、徘徊した時、いろいろな物を触るのです。一度手に取ってみたり、触ってみたり・・・と。その結果、彼が帰った後は必ず、置き物は明後日の方向を向き、きちんと置かれていた用紙はナナメになっているのです。

また彼は、水を多く飲む、多飲症でした。

普通、小一時間の会議であれば、出されたカップ1杯のお茶を飲む程度だと思うのですが、彼の場合、いきなり最初から出されたお茶をごくごくと飲み干し、打ち合わせが始まる前にコップを空にしてしまったのでした。

お客様に出したお茶を追加することはほとんどないのですが、その時の彼は「喉が渇いていたのだろう」と思い、私はペットボトルのお茶を別室から取ってきて、追加で注いであげたのですが、取ってきたペットボトルを戻そうと部屋から出ようとすると、彼は「そのまま置いておいてください。僕、水分を結構取るので・・・」というのです。

その主張には正直びっくりしましたが、彼の言う通り、お茶をペットボトルごと置いてあげると、小一時間の会議中、彼は自らの手でペットボトルのお茶を手に取り、何度も自分のコップにジャブジャブと注ぎ、何杯も飲むのでした。

そして、会議が終わる頃には、2リットル入りのペットボトルのお茶はほぼ空になるのでした。

さらには、そんな訳で当然ながら、彼は会議中によくトイレに行くのです。

これだけ飲むのだから、トイレの回数が増えるのも当たり前ですが、来客時、小一時間の会議で、1回ならともかく、2回3回とトイレに行くお客様は初めての経験でした。

そして、トイレの回数が多いので、その影響だと思いますが、彼のトイレの使い方がとても雑で、トイレットペーパーの紙はだらりと下がり、洗面所では水を撒き散らしながら手を洗うのでしょう。彼の帰ったあとのトイレ内や洗面所は、嵐が去った後のように、たいへん乱れていて、水浸しになっているのです。

これが彼と初めて会った時の、私の記憶・第一印象です。

とにかく、

「彼が来ると、いろいろな物が汚れる、乱れるなぁ~」

「よく水を飲むし、トイレの回数がすごいなぁ~」

という思いで、彼が去ったあとの片付けが毎回、大変だ・・・と思っていました。

(この他にも、「時間通りに来ない、遅刻する」、「話が長い」・・・などなど、いろいろ盛り沢山なのですが、それらについてはまたの機会に書いていきたいと思います。)

当時はとにかく「彼は落ち着かない人、よく物にぶつかる人、汚す人」という印象が一番だったのですが、

ずっと落ち着かない = 多動性

ぶつかる = 多動性、衝動性、不注意

汚す = 不注意

という、ADHDの特性そのものが、会った当初から顕著に出ていたなぁと実感しています。

なお、彼と接していくにつれて、後から判明したのが「彼は自己愛が極めて強い」というものでした。自己愛の強さは、ADHDとは直接の因果関係はないかと思いますが、彼がADHDの二次障害でうつ病を発症していたことと同様、ADHDに付随して副次的に「自己愛が強い」という側面があったように思います。これもまた、別の機会に触れていきたいと思います。

今回は、彼と初めて出会った時の第一印象は、ADHDの特性そのものであったというお話でした。