自己愛性パーソナリティ障害の人の特徴として、過去の自分の発言をすぐに忘れるということがありました。自己愛性パーソナリティ障害でなくとも、自己愛がたいへん強い人(パーソナリティ障害には至っていない人)についても、この傾向がたいへん顕著に見られました。

私が親しくしていた(付き合う寸前まで行っていた)自己愛性パーソナリティ障害であった女性は、何度も過去の自分の発言を忘れることを繰り返していました。

ある日、その彼女からLINEで、「再来週の夕方、仕事が早く切り上がるから、会えるよ。上司たちが会合で早く退社するんだ。」ということで、その日に食事をする約束をしました。

そして、実際に会った際、私が「今日は上司たち、早く帰ったんだよね。」

と聞くと、彼女は、「何その話? 私、そんなこと言ってないよ。勝手に話、作らないで!」と高慢な態度になるのでした。

普通であれば、「そんなこと、言ったっけ?」となるわけで、そうであれば私も、「今日は上司が早く帰る日で、だから今日はうちら、会ってるんだよね!?」と言えるわけですが、彼女自身が自分の発言を忘れている上に、発言をしていないことへの自信が過剰にみなぎっており、私はそうした彼女の自信に驚愕すると共に、彼女に敢えて指摘して覆す気力すら削がれるのでした。

他にも彼女は、自身の過去の発言をすっかり忘れることが数えきれないぐらいありました。あまりにも頻繁に生じることと、過去の彼女の発言とは全く正反対の言動をしていたりすることも多く、私は明らかな異常さを常に感じていました。

「なぜ彼女は自身の発言をすぐに忘れるのか!?」という点については、後や先のことは一切考えず、その場その瞬間で、彼女自身が一番欲っしているものや興味のあることに対して「反射神経的に発言している」だけのことであり、全く深く考えられた発言ではないことから、興味関心が薄れるとすぐに忘れてしまうのです。

また、自己愛性パーソナリティ障害の人は私の経験上、概ね、話や考えに一貫性を持たせることがとても苦手な傾向があり、計画的に根拠を示して物事を進めていく能力が乏しい傾向にあったのですが、自身の日々の発言についてもやはり、その場限りの反射神経的な発言であることから、一貫性がないことは明らかなのです。

よって、相手側からすると、自身の発言をすぐに忘れる人への不可解さが募るばかりか、過去の自身の発言を確信的な自信で否定するその姿に、一切の信用を失うのです。「その根拠のない自信はいったい、どこから出てくるのだろう??」と・・・。

これらの点を脳科学的に見た場合、自己愛性人格障害の人は前頭葉への血流不足が多いということが言われており、つまり、血流不足により前頭葉が未発達であることが多いとされています。

その結果、人への共感性などを司る前頭葉が未発達なことで、自己愛性パーソナリティ障害の人は他人への共感性、つまり、相手がどのように考え、どう思っているのかということへの思考力が弱く、そのせいで思いやりがない、冷たい人と言われる所以ですが、私が彼女に対して、「今日は上司たち、早く帰ったんだよね。」と何故発言したのか?ということへの疑念が彼女の思考の中に宿ることはほぼなく、「私、何か言ったのかな?」などと顧みる思いすら至ることもなく、単に自分が今、記憶がないことは揺るぎない事実であり、逆に相手のことを、「記憶にないこと、意味不明なことを言ってくる、頭の悪い人だな!!」という認識に至るのです。

また、自己愛性パーソナリティ障害の人の場合、自分の欲求を満たしたいがままに日々生きている、そして、自分自身が満足するように生きたり思考したりしている為、今の自分に興味がないことや自分が満足できない点についてはすぐに記憶を抹消する力を持っており、結果、自身の発言をいとも簡単に忘れ、否定することすらできるのです。

自己愛性パーソナリティ障害の特徴である「自分勝手さ、わがままさ」が故に、“自身の過去の発言をすぐ忘れる傾向” があり、さらには、「自分が大好き」「人への共感力がない」が故に、 “自身が100%間違っているにもかかわらず、根拠のない自信を掲げて相手を否定することすらできる” のです。

自身の言動に矛盾があることを重要視できない、あるいは、認識すらできないことが、自己愛性パーソナリティ障害の方の生き辛さ、周囲へもたらす悪影響に繋がっていることと思われます。