友達が少ないと自ら打ち明ける

自己愛性パーソナリティ障害の人、あるいは、自己愛が極めて強い人はよく、「私、友達が少ないんだ」という発言を、自らふとした時に発する傾向があります。
これは自己アピールでも何でもなく、自身が比較的落ち着いていて安定している時に、信頼している相手に対し、ふと自分の弱い一面を見せる言動であると思われます。

私が親しくしていた自己愛性パーソナリティ障害の女性の場合には、一緒に食事をしている会話の中で、あるいは、LINEでのやり取りの中で、突然ふと発することが多かったです。
「私の友達、●●ちゃんと〇〇ちゃんぐらいなんだ。友達、少ないの・・・」
この時の彼女は非常に素直で、自分の置かれている立場を一応認識できており、友達の少ない原因まで把握しているかはやや微妙ですが、少なからず、「普通の人よりも友達が明らかに少ない」という事実を受け入れていました。

私の良く知る、自己愛が非常に強い男性の場合も、比較的情緒が安定しており、素直な時に、ふと、「僕、友達が少ないんですよ・・・」という発言をしてきます。

いずれの場合も、日頃は他人や社会に対して強がって生きているものの、ある程度信頼している相手には本来の弱い自分を述べたり見せることで、逆に安心感というか、弱いありのままの自分を受け入れて欲しいという欲求が根底にあるが故の発言であるように思います。

そして、このような発言は、ほぼ定期的に、繰り返し発せられますので、それを聞く側の私としては、「ああ今この子(この人)、素直で心が安定しているんだな」という指標にはなります。

 一般的に、自己愛性人格障害や自己愛が強烈に強い場合、あるいは、他の人格障害のケースでも、往々にして友達が少ないことが多いです。理由としては、社会や他者との協調性に欠けることが多く発現することから、どうしても学校や社会などに馴染めず、結果、孤立することが多い・・・ということになります。パーソナリティ障害や発達障害ではよくあるケースです。

親友や友達が多いということは、それだけ、自分を認めてくれる人や信頼してくれる人が多いという証ですので、基本的に他者に迷惑や被害を与えることは少ない、あるいは、許容の範囲であるわけですが、自己愛性パーソナリティ障害の人が友達を増やしたいと思っているのに増やせない・・・という背景には、「自分が気づかないうちに他人を傷つけていたり、迷惑を与えている可能性が少なからずある」わけです。

そして、その事実を「自身では気づいていない」ということが最大の問題であるわけです。

パーソナリティ障害は一概に病気と決めつけられるものではなく、ある種の「脳の特性」であるという見解が多く、私自身も基本的にはそう思っています。その特性が他者に迷惑を掛けないレベルであれば「その人の個性である」わけです。しかしながら、他者に迷惑を掛けたり、他者の心を傷つけるようなレベルにまで達してくる場合にはもはや「病気である」という認識を持たざるを得ず、病気として相手に接していくか、あるいは、関係を絶たないと、逆に自分の心が病んでしまったり、むしばまれてしまいます。

友達が少ないという事実を自身が認識していることは、とても重要なことではあるのですが、「どうして友達が少ないのか?」という原因を究明することまではできないことに、自己愛性パーソナリティ障害の治癒の難しさがあるように思います。

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