自分の欠点を相手に投影する(自己投影・投影性同一視)

私が深く接した自己愛性パーソナリティ障害の方には、「自分自身の欠点を、相手の欠点として指摘する」という特徴がありました。

言われた側からすると、「全く心当たりのない、身に覚えのない指摘を受ける」のですが、よくよく考えていきますと、この指摘はまさに、「自己愛性パーソナリティ障害を患っている本人自身のことである」ということが分かったのです。

1つ、エピソードを・・・

私が個人的に親しくなった女性(のちに自己愛性パーソナリティ障害であることが判明)とのやりとりの一場面です。

彼女と何度か会い、まあまあ親しくなってきた頃、LINEでのやり取りの中で、お互いに「言った」「言わない」の話になったことがありました。

彼女はこの頃すでに、自分自身が発言したことを忘れることが多々あり、それを私が少し執拗に指摘したり、軽く問いただしたりしていました。すると彼女は、私に、
「こじらせ男子!」
「天邪鬼(あまのじゃく)だね」
「コロコロ意見が変わるね」
「意味が分からない」
「考え方が甘い」
「悪い女に騙されないでね」
・・・こんな言葉を投げかけてきました。

しかし、私の性格は正直、上記の指摘とは全くの正反対でして、私自身でも心当たりがないのは勿論、今まで誰からも上記のような指摘を受けたことはありませんでした。

ですが、彼女があまりにも自信たっぷりと指摘をするので、私としては「もしや、今まで自分が気づいていなかっただけかも?」と非常に不安になり、そこで、大きな反論はせず、これら言葉を一旦は受け取りました。

そしてその後、1ヶ月以上経った頃、彼女が大きな嘘をついていたことが発覚する出来事があり、この出来事は私の彼女に対する信用を大きく損なうことになったのですが、その時、彼女といろいろ話をしていて気づいたのが、過去の私に対する指摘、それらのすべてが「彼女自身のことだった」のです。

「こじらせ女子」(会話をねじ曲げる、ひねくれる)
「天邪鬼(あまのじゃく)」(本心とは逆のことを言う)
「コロコロ意見が変わる」(昨日話したことが今日になって覆っている)
「意味が分からない」(会話のキャッチボールができない)
「考え方が甘い」(単純な判断、思考)
「悪い男に騙される」(彼女の不倫相手である男のことを信じている)

過去に彼女が私に言い放った言葉のすべてが、そっくりそのまま、彼女自身のことであったと気づいたのです。

この時はこれ以上、深い話はせず、何となく私が彼女を許す形で収まったのですが、やがてほとぼりが冷めますと、再び同様のこと(自己投影)が繰り返されました。

この状況は、自己愛性パーソナリティ障害の特徴として挙げられる、「自分の欠点を相手に投影する(自己投影・投影性同一視)」というものになります。

本来は自分の欠点であることを、相手の隙を狙い、相手に指摘し、相手の欠点であるかのように認めさせる(相手に錯覚させる)ことで、「自分よりも相手の方がひどい、だから自分は悪くない」と自己を正当化する(自分の身を守る)という解釈です。

「自分の悪い部分をターゲット(相手)に投影し、自己を正当化する」というものです。

私は当初、「なぜ自分の欠点を、敢えて相手に指摘するのだろう?」ということが理解できませんでしたが、私がちょっと些細なミスをしたり、すこし強引に話を進めたりした時に、彼女は「今がチャンス!」とばかりに、自分の欠点を執拗に私に指摘(投影)してきました。その心理をじっくりと深く検証していきますと、とても合点がいくものでした。

自己投影の原因として、自分の非を認めたくないが故に、自分を正当化し、守ろうとする「一種の防衛機能」が働いているものと思われます。

自己愛の強い人から、全く心当たりがない指摘を受けた場合には、自分の欠点を相手に投影する「自己投影・投影性同一視」である可能性がかなり高いと思います。

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